J.J.ケイルを初めて知って、その音楽に魅了されたときは、デビューアルバム「Naturally」とセカンドの「Really」がすでに発表されていました。初めて買ったのは時間をおいてのデビューアルバムでした。
当時レイドバックということが一部のトレンドでした。米国南部の音楽を指向していたカプリコーンやシェルターのレコード会社の戦略やそこに所属するアーティストに端を発していると思うのですが、ゆったりした、まさにJ.J.ケイルの音楽をいいます。
レイドバックというと、すぐエリック・クラプトンを思い浮かべるかもしれません。しかし、クラプトンはJ.J.ケイルからの影響大なのです。「After Midnight」「Cocaine」など、彼の曲を取り上げていますものね。ただクラプトンが時代に応じてか自分の志向でか、どんどん衣を替えていったのに対して、彼は現在に至るまで、ワン&オンリーな音楽をやっている。微妙な違いは当然あるのだけれど、どのアルバムも金太郎飴なのだ。
いくらJ.J.ケイルの音楽といっても、メロディやアレンジはさまざまなのに、なぜ私たちは同じように聞こえるのだろうか。独断的で間違っているかもしれないが、リズムセクションとボーカルの質にポイントがあるのではないか。とくにボーカル。彼の個性の中心はボーカルにあると思う。あの力を抜き切った、つぶやくような声がレイドバックの象徴です。彼のボーカルを聴くと、「実は彼は若い頃、結核を患って、肺の半分ないんだよね」などというウソがホントに聞こえてしまうほど、力抜き切っているよね。
また、彼の音楽を聴くと、もちろんオクラホマなどアメリカの風景をイメージしてしまうにはもちろんだが、「レッドスネーク、カモン」とか牧信二とか林家三平などの、一芸で長く存在した寄席芸人も思い出してしまう。つぶやきボーカル一筋で35年以上ですもんね。
レコード・CD合わせて16枚。